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バニラ・スカイのrensaurusのレビュー・感想・評価

バニラ・スカイ(2001年製作の映画)
3.9
テーマ性が良いだけに、名作とは言い切れない映画の完成度が残念な作品。詰めが甘い。でも好き。

酸っぱさを知って初めて分かる甘さ。虚実が入り混じり、全てが淡い夢想に消えていく儚さ。バニラスカイという、甘さと幻想を上手く表したモチーフ。「人はいつでも出直すことができる」というメッセージ。このように、テーマやセリフなどはこちらを惹き込む魅力に溢れており、その夢遊のような展開と相まって没入感や陶酔感を味わえた。

しかしながら、急なSF展開や、物語を追った我々の努力が徒労に帰すような展開から、腑に落ちない感覚が尾を引く。別に夢オチのような展開を嫌う訳ではない。「いつでも出直せる」という時に主人公の条件までリセットされてしまう卑怯さがあるような感覚が残るのである。

あとひと押しで名作。脳内で補完して完成した名作を妄想してしまいたくなる余韻がなんとも言えない。
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