菩薩

日本の青春の菩薩のレビュー・感想・評価

日本の青春(1968年製作の映画)
4.5
戦中・戦後世代の越え難き断絶を描きながら「諦める事が青春だった」時代はとうに終わったのだと明るい未来に向けての姿勢。耐え難き戦火は受験戦争へと姿を変え、国家・社会・家庭の枠組みの中に押し込める事こそが是とされる時代は継続しているが、個人の幸福を追求する権利は誰の手にも握られている、そんな時代を我々は生きて良いのだと熱い想いを感じる。戦時の極限状態でもヒューマニズムを捨てきれなかった藤田まことは監督自身の投影なのかもしれないが、臆病である彼は奥崎謙三にはなれないながら、自身の戦後と対峙していく。悪の権化みたいな佐藤慶はスタートレックみたいな制服を着ているし、藤田・新珠の前に「現実」として聳え立つ憎き男性性の塊であるが、おそらくあの時代この様な一切の悔恨を抱かず成功を手にしたおっさんは大勢いたのだろう…と言う藤田まことも家に帰れば家父長制炸裂のクソおっさんである事に変わりは無いのだが。まるで正しい青春を通過して来なかった私が言うのもなんだが、国は幸せにはしてくれないのに何故その身を捧げなきゃいけないのだと嘆く田中邦衛に首がもげそうになった。日々「日本死ね」と思いながら生きている私には刺さるものしかなかったのに回りに団塊世代しかいなくて病んだ。とりあえず防衛大に対するディスが強烈過ぎるし、和服の新珠美千代が最強過ぎる、傑作。
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