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民衆の敵のHKのレビュー・感想・評価

民衆の敵(1978年製作の映画)
3.8
ずっと未ソフト化で観る手段がなかったスティーブ・マックイーンの1978年の幻の主演作が、いつの間にかDVDで発売されていました。
「近代演劇の父」と言われるイプセンの戯曲の映画化で、ノルウェーの田舎町を舞台に町の有力者と民衆に敵対され孤立する善良な主人公をマックイーンが演じています。

本作のマックイーンは奥さんも子供もいる町医者で、しかも眼鏡に長髪に髭モジャでよく見ないと誰だかわからないという、あまりにもそれまでのマックイーンのイメージとはかけ離れた役どころです。

本作はアクターズ・スタジオ出身でもある当時48歳のマックイーンが自ら製作総指揮をし、アクション抜きの演技で勝負しようとした野心作でした。
しかし、誰もそんなマックイーンを見たくなかったということでしょうか。
『タワーリング・インフェルノ』から4年の沈黙を経ての大スターの期待の新作のはずが、さんざん酷評され地味なひっそりとした公開だった記憶があります。

観たのは私が高校の頃で、今回はそれ以来二度目の鑑賞です。
あらためて観ると、作品のテーマは今でも十分通用するし、映画として小品ながらそんなに酷い出来だとは思いません。しかし、やはり当時の大スターに期待されていたものではなかったということでしょうか。
でも本作では、他の作品では見られないマックイーン全盛期の別の顔が観れますし、なぜマックイーンがこの時期にこの作品を選んだのか興味も湧きます。
奥さん役はベルイマン作品が多いビビ・アンデショーン。主人公を虐める役はチャールズ・ダーニング、リチャード・ダイサートらです。
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