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スキャナーズのCINEMASAのレビュー・感想・評価

スキャナーズ(1981年製作の映画)
3.5
 1981年に製作・公開されたデヴィッド・クローネンバーグ監督&脚本による大出世作。製作時系列で言うと『ザ・ブルード/怒りのメタファー』の後、『ビデオドローム』(近年は『ヴィデオドローム』表記)の前の作品。1980年代のスプラッタ―&ホラーブームに乗って世界中で大ヒットした作品で、5作目まで続編が作られた(2作目はクローネンバーグはノー・タッチ。3~5作目は原案or原作としてクレジットされている) 近年、『ソウ』シリーズを途中から連続して手掛けたダーレン・リン・バウズマン監督がリメイクを申し出たが、クローネンバーグは映画化権の売却を拒んでいるらしく企画は頓挫したままである。

 さて、この作品。描かれるのは<スキャナー(走査者)>と呼ばれる超能力者の闘い>である。

 小学生の頃に、昼間にテレビで<スプラッタ―映画名場面集>のような番組がよく放映されていて、『スキャナーズ』における<頭部バチコーンっ!!→血しぶきドッバーっ!!>なシーンも流れていて、「ひぃぃぃぃ~~っ……!!」と戦慄したものである。「残酷だし、汚らしいなあ……」と思って、以来、しばらく僕はクローネンバーグの作品を忌避していた。高校生の時にレンタルビデオでまとめて見たが、『シーバース/人喰い生物の島』も、『ラビッド』も、『ザ・ブルード/怒りのメタファー』も、そしてコレも苦手で、当時記していた手書きの映画鑑賞ノートには「クローネンバーグとは合わない」とある。『ザ・フライ』も好みでは無かった。その評価が一変したのは『デッドゾーン』を東京での劇場公開で観て以降で、それからレンタルビデオで『戦慄の絆』、『戦慄の絆』、『裸のランチ』を見て、以降は大ファンである。過去作も再度観返して、「良いなあ、クロちゃん♪」と思うようになった。

 さて、『スキャナーズ』。

【スキャナー(=走査能力を身に着けた超能力者)を使って警護を行う警備会社に強制的に送り込まれた男、ベイル。科学者の手によってその能力をさらに開発されたベイルに与えられた任務は、恐るべき力で世界を支配しようとする悪辣なスキャナーであるレボックの追跡だった。実はレボックはベイルの兄である事が判明するのだが、運命の悪戯か、二人はクライマックスで壮絶な念動力合戦によって熾烈な戦いを繰り広げる! しかして生き残るはベイルかレボックか!?】というスジ。

 出演は、ジェニファー・オニール、スティーヴン・ラック、パトリック・マクグーハン、マイケル・アイアンサイドら。

 オープニング・タイトルから被さるハワード・ショアの音楽からして気分をガンガンに高めてくれる。ワクワク、ワクワク!!

 序盤に用意された、件の頭部爆裂シーンも凄まじい。全体の特撮監修はロブ・ボッティンだが、このシーンのVFX担当は後に『ザ・フライ』でも、その手腕を存分に振るったクリス・ウェイラスである。

 レボックを演じたマイケル・アイアンサイドが良い! <カナダのジャック・ニコルソン>と呼ばれたマイケル・アイアンサイドだが、この後は助演作メインながら売れっ子となり、『面会時間』や『トータル・リコール』、『スターシップ・トゥルーパーズ』でも存在感を見せつけた。大好きな俳優だ。本作は彼の初期作にして代表作であろう。

 作品としても面白い。初見時の低評価はなんだったのだろう? いやいや、ホント、面白いじゃあないか! 

 クライマックスのベイルとレボックの念動力対決など、凄まじい。手には静脈がボコボコと浮き出て、顔面にも血膨れが湧き起こり、それを手でかきむしりつつ煩悶し、皮膚が破れて鮮血がドロドロと溢れ出、眼球が爆発する。壮絶でグロテスク極まりない描写だが、この特殊技術は凄い。CG全盛期の現在と違ってローテクだが、違和感も無いし。そして人体発火(=スポンティニアス・コンバッションと言います)に至る。

 ラストは意味深だが、「あー、そういう事ね」と理解。全体的にグログログチャグチャなクローネンバーグ節で無いところも良かった。まあ、グログロなクロちゃんも好きなんだけど。

 スクリーンで観られて良かった。満喫、満喫。
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