CANACO

暗黒街の顔役のCANACOのネタバレレビュー・内容・結末

暗黒街の顔役(1932年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

1932年公開のアメリカ映画。監督はハワード・ホークス。原題はScarface。禁酒法が施行されたのは1920年から1933年まで。顔に傷跡があったことから「スカーフェイス」と呼ばれたアル・カポネが実在した時代に公開されている。

1983年に公開されたブライアン・デ・パルマ監督の『スカーフェイス』の予習として鑑賞。警察と激しく争い、散ったギャングの大玉・トニー・カモンテの物語。

ルイ・コステロのボスを暗殺し、次のボスとなったジョー・ロボの下で働き始めるトニー・カモンテという男。ある街の南部で酒を売り稼いでいるが、トニーが先走り別の組織が島にしている北部にまで手を出したために抗争が勃発。暴走するトニーに手を焼いていたジョー・ロボは暗殺を狙うが失敗。逆にトニーと右腕のリナウド(男前)に報復され、弱々しく命乞いをするが、殺される。

トニーは、横恋慕していたロボの妾・ポピーも大金も手に入れ、我が物顔。しかしそれは束の間。疑心暗鬼、簡単に人を殺してしまう短気さ、妹への偏愛が入り乱れ、トニーの人格と夢の国は綻びを見せていく。やがて決して戻すことができない重大な過ちを犯してしまい、全ての終わりへとつながる。

株式会社アイ・ヴィー・シー運営サイトの「淀川長治世界クラシック名画撰集」によると、フランシス・コッポラ監督も本作が好きで『ゴッド・ファーザー』を撮ったというほど、ギャング映画のお手本となった作品だという。

邪道とはいえ、マシンガン片手に裸一貫で成り上がるまでのサクセスストーリーと、後半のドラマチックかつクレイジーに崩壊していく様との強いコントラストが刺さる。
そこに輝く"The World is Yours"という言葉は黄金のバッヂのようで、野心のままに生きて散った野獣に向けた献花にも見える。

アル・カポネをイメージして作られた作品だが脚色も多い。妹への近親相姦的な思いは、イタリア・ルネサンス期に実在した政治家・チェーザレ・ボルジアの一面を使ったという。ボルジアもまた権謀と冷酷な手段でイタリア統一を図った人物らしい。

主人公のトニーを演じたのはポール・ムニ。弟分のリナルド(1983年版でいうマニー・リベラ)はジョージ・ラフトが演じている。オリバー・ストーンが脚本を担当した1983年版の『スカーフェイス』と比べると大枠は同じでも細かいエピソードは違う。
・デパルマ版の主人公はキューバ難民
・デパルマ版ではコカインやカナディアンウイスキーで稼いでいたが、本作はなくビールの密売で稼いでいる
など。

ラストの撃ち合うシーンの演出も大分違うが、圧倒される激しさとトニーの狂気は変わらず。本作あってのデ・パルマ版だというのはよくわかった。実在するボスをモデルにした刺激的なギャング映画ではあるが、それだけではない。
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