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暗黒街の顔役のdiesixxのレビュー・感想・評価

暗黒街の顔役(1932年製作の映画)
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いつまで待ってもまともな国内版ソフトが出てこないので北米版を購入し、久しぶりの再見。画質が良くなると、本作のドキュメントタッチの生々しさが増した。
プレコード時代に製作された暴力とセックスが充満した傑作。全編に漂う煙草と硝煙と催涙ガス。スカーフェイスの即物的で短絡的な暴力と異様な反射神経、そして近親相姦的な欲望。すでに刑務所に入っていたとはいえ、モデルのアル・カポネは存命中なのにこの容赦のなさ。30年代のハリウッドがエキサイティングかつ狂っていたことを端的に知ることができる。
ハワード・ホークスの演出はキレキレ。ギャングのボスが暗殺されるまでを淡々と、しかし緊張感たっぷりに追うオープニングの5分近い長回しから、すでにかましている。移動撮影とスクリーンプロセス、的確なカット割りで見せるカーチェイスにも目をみはる。随所に登場する「X」のモチーフ、対照的な二人の美女、カレンダーとマシンガンで見せる時間経過…細部まで才気走ってる。いろいろ見てきたけどやはりこれがホークスと最高傑作。
Blu-rayにはトニーが裁判にかけられ、絞首刑となる別エンディングも収録。自主規制として作られた「道徳的な結末」だと思うが、こちらも今見ても十分ラジカルな表現だ。
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