えびちゃん

切られたパンにのえびちゃんのレビュー・感想・評価

切られたパンに(1968年製作の映画)
5.0
なんなんだ、切られたパンに、って。
「オー・パン・クペ」というカフェの名前がタイトルである。邦題付けた人、絶対観てないに1クペ。
あるカップルの別れと美しく眩しかった日々の追憶の物語だ。幸せに慣れず耐えきれなかった男と幸せを与え続けたかった女。男は女の元から去り、またこの世からも消えてしまったけど、彼女の記憶の中で鮮やかに生き続ける。
ギィ・ジル監督作品は喪失と追憶の反復が主のようで、鑑賞者のノスタルジーやらセンチメンタリズムを激しく刺激してくる。年齢相応にさまざまな経験を経てきたからか、作中のエピソードに似たような思い出が浮かんできて悶え苦しんだ。
『悲しみよこんにちは』や『冬の旅』を想起したのだけど、監督はジャック・ドゥミの短編作品の助監督だったよう。
『海辺の恋』と同じく、モノクロパートとカラーパートを行ったり来たり。陰影がくっきりしていたモノクロもかなり美しくうっとりしたが、なんといってもカラーパートの配色が神がかり的に美しかった。
こんなに素晴らしい監督が隠されていたとは。一生観ていたいほど素敵な作品。
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