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ロンゲスト・ヤードのあのレビュー・感想・評価

ロンゲスト・ヤード(1974年製作の映画)
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また最高の映画を見てしまった。

バート・レイノルズ演じるアメフトの元スター選手が刑務所に入って囚人チームを率いて試合をするという話。
刑務所での肉体労働はタフだ。銃を持った看守に囲まれながらの強制服従の労働。(僕はこの手の過酷さがたまらなく好きだ。)汗と泥にまみれて肉体を限界までの酷使するところは、スポーツ(それもアメフトの)過剰さと似ている。看守チーム対囚人チームの試合が始まれば、ピッチの上でその肉体をぶつけ合う。しかしそこには戦術もある、チームプレーもある、観客の歓声もある、そして何よりプライドがある。僕は一体なにに興奮しているのか。それはもはやスポーツではないのかもしれない。少なくともルールの上で成立し、理解可能なゲームにではない。
刑務所の支配者、所長によって負けを強要されているバート・レイノルズがわざと負けに行くところが本当に歯がゆい。負けなければ濡れ衣で20年プリズンになってしまう。でもわかっていたよ、みんなのために自分のために命令に背くことは。それがプライドだ、ここで言われてる「タマ」だろう。いや、もはやそれすらどうでもいい。勝ちに行くことが最高なんだ。

看守チームは、囚人たちを人間のクズだと言っていた。確かに、凶悪犯罪者ばかりで、それもしれっと示されている。妻を撲殺とかなんとか。ここ(ビッチ上)で示されているのは、法のもとでの犯罪でも、道徳的宗教的な意味での罪でもなくて、ただ肉体と肉体がぶつかり合って、円陣を組んで声を揃えて、勝ちを喜ぶ人間の姿だ。それがきっとアルドリッチの人間主義なんだと思う。この映画はアンガーという救いようのない凶悪な人間を用意しておきながら、深入りすることはない。その黒点を黒点のまま残しているのは、シネマとしての節度なのか、あるいはそれがこの映画のヒューマニズムなのか。
あ