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浪華悲歌のnowstickのレビュー・感想・評価

浪華悲歌(1936年製作の映画)
4.0
ゴダールやトリュフォー、スコセッシといった後の映画監督に影響を与えた溝口健二が、自身のワンシーンワンカットのスタイルを始めた最初期の作品とのことで鑑賞。

ワンシーンワンカットって、もっと舞台みたいな単純な構図や、カメラを移動させての撮影とかを勝手に想像していた。しかし、斜めからの画や、枠越しの構図といった、画的に面白い構図を長時間、固定カメラで見せていて驚いた。
特に説明カットが少なく、説明カットと会話のカットの中間みたいな画で新しいシーンが始まり、そのまま他のカットでワンクッションを置かずに登場人物が会話を始めたりするのも、あまり見たことがないカメラワークで面白かった。

メディアに関西弁が載った最初期の例、とのことだが、普通に音声も聞き取れて良かった。
逆に本作より14年も後に公開された、黒澤明の羅生門とかが、なぜあんなに聞き取りづらいのか疑問に思うほどだ。

他の人も指摘するように、その印象的なラストシーンも含めて、ストーリーの構成はトリュフォーの初監督作品「大人は分かってくれない」に似ていた。
溝口健二は現代の世界の映画に、結構影響を与えていると思うのだが、日本だとそこまで有名ではないのが残念だ。
溝口作品は初鑑賞だったが、普通に面白かったので、今後も見て行きたいと思う。
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