140字プロレス鶴見辰吾ジラ

天使にラブ・ソングを…の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

天使にラブ・ソングを…(1992年製作の映画)
4.0
【歌は自由主義】

ギャングに命を狙われ逃げ込んだ修道院でクラブ歌手が巻き起こすある種の天命もしくは化学反応をコメディで描いた大人気作。今では「アナ雪」現象で映画における歌のパワーは徹底的に証明されたが、まだ恐れの少ない時代の歌と黒人女性を修道院という箱から見ればアウトローな切り込みで魅せてくる。修道院であれば神に奉仕し俗物と離れるわけだが、誰にだって本音で騒ぎたいし吐き出したいモノはあるわけで、それがアウトローな世界から来たクラブシンガーが文字通り型を破っていくところに校舎のガラスを割って回るような快感がある。実際そんなアウトローな生き方はできなくてもシチュエーション的に禁欲ある場所で型破られて、歌のパワーもブーストしたらシンプルに楽しくてしょうがない。教頭先生的なポジションのシスターもいるが、ボンクラ感や幸薄い感のあるシスターが歌のソロで声を響かせピアノ伴奏ではっちゃける姿はとんでもなく愛おしい。邦題の「天使にラブソングを」という洒落たお膳立てもあり、何故か神をも恐れぬ行為のハズが最高級の反抗心とエネルギーを生み出す。平和な本音の熱唱である。ストーリーの出だしに「ひょんなことから」とか「偶然に」という言葉がつきものだが、コメディという舞台を存分に使い今も昔も病んだ心に届く解放感は我々の超自我を刺激する。