2024.3.30 30-38
みんな、ニクラスの妻アリーダに囚われているように見える。確かにニクラスは、幼少から猟奇的な人物として語られるが、「アリーダ」を中心にして、彼女の持つ引力のようなものに各人物たちが引き付けられ出来事が展開しているように思う。
彼女が持つ引力たるものを感じたのは、医師ベイリーに連れ出されレストランの裏で逃げるよう説得される場面だ。彼女はベイリーの胸にもたれる。そのシーンの顔のアップがあまりに綺麗だったからか、初め何が映っているのかよくわからなかった。暗い背景の多い映画において、このシーンは異様に白い。
もう一つこの映画の主題は、「瞳に何を見るのか」であると思う。男たち、特にベイリーは、瞳の奥に感情含めその人物の心理を見る。しかし、アリーダにどのような心理を見たのか。彼女に対しては、「見る」というより、「見せられている」のではないか。
確かに、アリーダは眼差しの対象ではあるのだが、しかしそれは単に見られるだけでなく、見る側の主体を変化させてしまう。あまりこのことは、基本的にミステリー、ノワール調の物語で、強調されていないとは思うが裏で通底しているのではないか。