のりまき

アイリスののりまきのレビュー・感想・評価

アイリス(2001年製作の映画)
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大恋愛の末に結ばれた、才気溢れる作家アイリスをジョンは崇拝していたが、彼女はアルツハイマーにかかる。どんどん言葉を失い、思考力を失っていく妻を必死で介抱するが、次第に手に負えなくなっていく。ただ描けば果てしなく暗くなってしまうこの物語に差し込む光のような過去のアイリスの奔放な記憶。
原作者(夫)が「そっくりだ!」と絶賛したジュディ・デンチの見事な演技。瞳を煌めかせ堂々と公演する惚れ惚れするような姿。物忘れが酷くなったことを必死で誤魔化そうとする狭さ、己を失うことへの恐怖。そしてどんよりした目でうろうろとあてどなく彷徨う哀れな姿。本当に素晴らしい!醜くあることを恐れないその役者魂!
ウィンスレットも良かった!この作品の彼女の働きは素晴らしい。その輝きあってこその闇の暗さ。
ジム・ブロードベンド、ヒュー・ボネヴィルの演技がまた!吃りで奥手という役柄上地味ではあるが、愛する人を何とか救おうともがいて自らも泥沼に沈みこんでいく様が、ああもう・・・。
「お前が憎い!お前の世界に飛んでいくつもりだろうがもう出来ないぞ!お前にはもう何も無い!」行き場のない絶望。
目がパンパンになっていて次の日困った。何が私を泣かせたって、それだけ努力したのにも関わらず、彼は後悔し続けていること。何度も自分のした事を思い出し、苦しんだこと。それを書き表し、映画を見て、妻と自分を再確認していること。つらい・・・。
『智恵子抄』に心動かされたことのある方には是非・・・。
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