認知症を扱う作品は、いつも観ていて辛い。自分の愛するひとが少しずつ変わっていってしまう、自分を忘れてしまう。考えただけで心が痛くなる。
アイリスは哲学者であり、作家でもある。
言葉を紡ぎ、人生を歩んできた者から知性を取り上げる。これほど酷い仕打ちもない。
主にジュディ・デンチを観たかったけど、それ以上にいいなーと思ったのは夫役のジム・ブロードベント。奔放な妻に複雑な感情を抱きながらも、全てを優しく包もうとする柔らかな姿。釣り合いがとれてなさそうな二人が惹かれあい、年月を経てお互いを強く結びつけていく経過がとても素敵。海辺のシーン、自転車のシーン、もう完全に二人の世界。大好き。
才色兼備なアイリスの若い頃を演じたケイト・ウィンスレットもすごく魅力的だったし、各々の演技が調和を生み出している良作でした。