「言葉は思索だ」と愛と幸福を求めて言葉を紡いだ作家が、老いと病気のために、記憶や言葉をなくしてしまうお話。
生き方は自分で選んでいくことができる。でも死に方は選べない。かつて美しい言葉を生み出した唇が、簡単な単語を発することもできなくなり、笑うこともなくなっていく。とても辛く、残酷なことだ。
でも、、
アイリスが言葉を失っても、ジョンはアイリスのことを思い、言葉を紡がせようとする。そして、アイリスもまた、つらい思いに苦しむジョンを慰撫し、ごくたまに共に笑い合ったりもする。
冒頭にアイリスがしたスピーチが思い出される。どんな教育も、どんな知性も、愛と幸福を手に入れるための方法でしかないと。
アイリスは求めていたものを手にした人生を送ったのだな。