シンタロー

陽のあたる場所のシンタローのレビュー・感想・評価

陽のあたる場所(1951年製作の映画)
3.7
ジョージ・スティーヴンス監督×モンゴメリー・クリフト主演。セオドア・ドライサーが1906年に実際起こった殺人事件を基に書いたベストセラー小説"An American tragedy"を映画化。
ジョージ・イーストマンは、街頭伝道師の母と貧しい母子家庭で育った。ホテルのボーイをしていたジョージは、裕福な実業家の叔父と出会い、経営する水着製造工場に雇われる。叔父の家で美しい令嬢アンジェラ・ヴィッカーズに一目惚れするが、所詮高嶺の花であった。工場の同じ梱包ラインで働いている貧しい娘アリス・トリップと映画館で隣合わせになり、職場恋愛は禁じられていたにも関わらず、2人は急速に親密になる。真面目な働きぶりを認められたジョージは昇進の機会を得て、叔父の邸宅パーティに招かれる。社交界に馴染めず、1人ビリヤードをしているところをアンジェラに見初められる…。
中学の頃?祖父に世界一の美男美女が見られると、一緒に観たのが最初だったと思います。純愛ラブストーリーかと思ってたら、サスペンス?そこまでドロドロじゃないにせよ、まるで「太陽がいっぱい」的な展開に。明らかにジョージがリプリーと違うのは馬鹿なところ。良く言えば純真。野心家でなく、嫉妬深くなく、狡賢くもない。それが故にもっとうまくやれよーと言いたくなってしまう。真の優しさではない優柔不断が招く悲劇。何度も修正できる選択肢があったと思うんですけどね。男前なのに、もったいない愚かさです。救いになるのはアンジェラという女性の天真爛漫な朗らかさと包容力。途中から明らかに怪しくなっていくジョージを心配はするけれど、疑ったり責めるようなことは最後までしません。ジョージにとって"陽のあたる場所"がアンジェラだったのでしょう。「私たちさよならを言うために出会ったのね」は泣けました。
主演はモンゴメリー・クリフト。ブランドやディーン程の伝説にはなれなかったけど、顔では圧勝。細いからか意外と小柄。芝居は繊細でやや硬質。ヒロインのエリザベス・テイラーには、一目惚れされて猛アタックを受けたようですが、クリフトがゲイだったため実らず。2人の間には深い友情が芽生えたようで、クリフトは離婚を繰り返すテイラーの子供の世話をし、クリフトが病や事故に苦しんだスランプ期から早逝するまで、テイラーは支え続けたと書籍や写真にも残されています。モンティ&リズで愛され、以後2作で共演。クリフトの急死がなければ「禁じられた情事の森」でも共演のはずでした。本作の撮影は49年。29歳と17歳の最も美しいモンティ&リズが拝めるという点で加点しました。ダブルヒロインにシェリー・ウィンタース。嫉妬に狂い、一心不乱に結婚を迫る、アンジェラとは対照的な性格とビジュアルのアリスを大熱演。オスカーではリズを押し退けて主演女優賞候補になりました。アンジェラが太陽なら、アリスは月。月夜の中「星に何を願ったの?」恐ろしい名演です。
シンタロー

シンタロー