タイレンジャー

大アマゾンの半魚人のタイレンジャーのレビュー・感想・評価

大アマゾンの半魚人(1954年製作の映画)
3.5
田舎の王様が都会の美女に恋する悲劇です。

この映画は古典的なモンスター映画なので、「怪物と遭遇する恐怖を人間たちの視点で描く」という型通りの作品ですね。でも、ちょっと切り替えて【半魚人の視点】で物語を読んだほうが面白いかもしれません。

本作での半魚人は、言わば田舎で生まれ育った王様です。外の世界のことは知らないけど、地元のアマゾンは彼にとって十分に幸せな環境でした。

しかし平穏な日々は突然破られ、見ず知らずの人間たちが半魚人の王国に土足で踏み込んできます。半魚人から見たら不法侵入、いやこれは侵略です。

「おめだぢ!ここはオラの土地だべよ!出てかねか!」

憤慨した半魚人は初めて目にする「人間」に戸惑いながらも彼らを殺めてしまう。

探検にやって来た人間たちは言わば「都会人」。田舎でひとりぼっちの半魚人とは対照的に洗練されていて、社会的な集団です。

都会人たちは半魚人のことを一方的に「未開地の野蛮人」と決めつけ、差別します。半魚人はただ平和に、彼にとって当たり前の暮らしをしていただけなのに。

ところが半魚人に魔が差します。都会人の紅一点の女性に惚れて、心をかき乱されてしまうのです。今まで見たこともない美しいものに目がくらんでしまったのでしょう。

「オラの嫁にならねが?」

恋愛などしたこともない「お山の大将」は美女を無理やり連れ去ってしまいます。

当然、都会の美女は田舎の王様の価値観など分かるはずもなく、両者の溝は深まる一方でした…。


ウィキペディアにも書かれてありますが、『キングコング』もこれとよく似た話なんですね。これも田舎王が都会の美女に目がくらんで、ついには自身の身を滅ぼしてしまう。

背景としてあるのは自然vs文明の対比です。もっと言えば、自然はただそのままでも美しく幸せなのに、文明と遭遇することによって全く異なる価値観を知り、自身の価値観が揺らいでしまうということだと思います。

「なんか文明的なほうがイケてるんじゃね?」という疑問と誘惑が生じるんですね。その象徴となるのが人間の美女なんですなぁ。