emily

みんな誰かの愛しい人のemilyのレビュー・感想・評価

みんな誰かの愛しい人(2004年製作の映画)
3.5
 20歳のロリータはぽっちゃり体系で、父親は有名な作家で、最近若くて美人の女性と再婚しており、コンプレックスの塊である。近寄ってくる男は皆父親が目当てで恋愛も上手くいかない。大好きな歌のレッスンでは教師からよく思われていなかったが、ロリータの父親の事を知った途端、教師の夫も作家なので、これはチャンスとロリータの近づく。いろんな誤解やすれ違いに悩む人たちの群集劇。

 群集劇はロリータを中心に描写されていく。会話の節々、電話による会話を遮断され、表の顔と家での顔、接する相手により態度が変わって行く、人と人との絶妙な隙間を這うようにコミカルに描写されている。会話主体であるが、飽きのこない人物やシーンの切り替えを細かに積み重ねている。面と向かっていても言葉と言葉のやりとりの中で、いつでも少しのすれ違いが日常に起こっており、それにより悩んだり、またそれにより嫌いな人を好きになったりと、日常の何でもない些細な会話や出来事を巧みに交差させ、人間の持つコンプレックスや引け目をしっかり引き出している。

 共感というより、誰しもが誰かと比べてしまい、それにより引け目を感じてしまう生き物であることを改めて小さな世界の群集劇で思い知らされる。そうして誰しもが愛されたい願望でいっぱいである。しかし自分の良さを認め、愛してくれる人は意外と近くに居るものだ。どんなにひねくれていても、どんなに憎たらしくてもそんな自分を丸ごと受け入れてくれる人は、きっと隣を見れば居るのだ。理想を求めても、ない物を求めても、愛はいつだってすぐ近くにある。シニカルでありながら最後にはポっとあったかい気持ちにさせてくれる。
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