千年女優

地獄門の千年女優のレビュー・感想・評価

地獄門(1953年製作の映画)
3.5
平安時代末期の平治元年。平清盛が熊野参詣に赴いた隙を狙って藤原信頼の軍勢が三条殿を襲撃し、上西門院の身替りとなった袈裟の一行が襲われている場面に遭遇した遠藤盛遠。敵を退けて救い出した彼女を兄の盛忠家にかくまった彼が、やがてその美しさに心を奪われるも彼女が人妻であると知って狂いもだえる様を描いた時代劇映画です。

戦前に女形俳優で活躍後に映画監督へ転身して五十本以上の作品を手掛けていた衣笠貞之助が、平家物語にも綴られた物語を題材にした菊池寛の戯曲『袈裟の良人』を映画化した1953年公開の作品で、日本初のイーストマン・カラーが話題を集めると共にカンヌ国際映画祭グランプリにアカデミー賞名誉賞の受賞と国際的な評価も獲得しました。

テイストや演技は時代劇らしい時代劇で、中世の時代を舞台にした古典らしい悲恋の物語を「総天然色」で彩られる鮮やかな衣装や背景と共に描きます。明快なお話とはいえど90分足らずとコンパクトな尺では人物の感情を捉え切るには些か不足感はありますが、今も昔も変わらぬどんな人物であろうとも狂わせるこひごろもを綴った一作です。
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