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黒水仙のやのレビュー・感想・評価

黒水仙(1946年製作の映画)
4.2
神に、天国に、最も近い存在であるシスターが鳴らす鐘塔は断崖絶壁に立つ。誤って足を滑らせれば真っ逆さまに奈落の底。そして、主人公たちが派遣されるヒマラヤ奥地の修道院は、元は将軍の後宮。相対するもの同士が共存する場所で、彼女たちは次第に精神の均衡を保てなくなっていく。信仰というモノの脆さや儚さを思わずにはいられなかったけれど、決してそれは彼女たちのせいではない。人も物も、"それ"が"それ"として正しく機能することが出来るのは、きっと己の持ち場に在る時のみ。天には神が在り、修道院にはシスターが居る。信仰のない場所には神が宿らないように、ホームである修道院から一歩離れれば、もう彼女たちがシスターとしていられなくなってしまうのはある種当然のことであるように思えた。
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