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鏡の女たちのJeffreyのレビュー・感想・評価

鏡の女たち(2002年製作の映画)
3.0
‪「鏡の女たち」‬
‪冒頭、閑静な住宅街。必死に失踪した女を探す母。見つかった娘、原爆ドームが水に反射、ベンチに腰掛ける三人の女性、灯籠流し、母の告白、記憶喪失、血の色、広島へ…本作で吉田喜重の活動は終了している。まだ御存命ですが、多分最後の作品なんだろうなと思う。主演は妻である岡田茉莉子に加えて田中好子と一色紗英が務め、カンヌ国際映画祭の特別招待作品だ。なんと言ってもキャンディーズの田中ことスーちゃんがミステリアスな役柄をしていて好きだったな。もう亡くなられて八年くらい経つのかな…田中好子は安達祐実を一躍スターダムにのし上げた家なき子のお母さん役で初めて知って、そこからキャンディーズの春一番やその気にさせないで等を聴いてから今でも聴いてる。昭和のポップ、シティポップから紅白がまだ本当の意味で生きていた時代の歌謡曲や歌手、アイドルは大好きだ。あの傑作黒い雨の芝居は素晴らしかった…話がそれたが、本作には象徴する割れた鏡が何度も映るんだが、その鏡に反射させ捉える手法も本作には観れたが、何より吉田最後の作品(今のところは)で岡田茉莉子が最後に日傘を使うシーンが目立たない感じに描写された場面はなんか感動した。広島の街並みのショットが美しく、撮影の中堀正夫がやはり良い。そりゃ実相寺昭雄作品を手掛けたカメラマンだからな…納得はいくわ。所謂、原爆と女性を最後にどうしてもテーマに持ってきたかったんだろうな。この時代の監督の年齢は七十歳過ぎてるだろう…凄いな。本作で女優五十年を迎え一五四本目の作品になった岡田茉莉子も歳を取ったなぁと感じるが綺麗だ。まず本作が凄いなと感じたのはあの異様な形で遺って核兵器がもたらす影響のシンボッリクな原爆ドーム付近の水際のベンチで祖母と記憶喪失の母、娘の三人が横一列に並んで、岡田演じる祖母が原爆投下の瞬間を語り始めるシーンの印象は半端なく、凄い時間を体現する気持ちになる。あの岡田の芝居は凄い…あっぱれ。そもそも吉田喜重は福井の大空襲経験者らしいのだが、本作を作るに当たってはかなり悩んだらしい…自分が果たして原爆を描く資格があるかと。だが、思い返せばATG作品で既に原爆に言及はしていた。それは「さらば夏の光」である。それでは広島では無く、長崎で被爆した家族を亡くした事を言葉として表し、直接的では無かった。更に言えば彼は蝶々夫人の演出でも原爆投下を組み入れてる。そんな彼が二〇世紀最後の劇映画、嵐が丘を撮り、十四年ぶりに監督し、彼にとっては二十一世紀最初にして最後の作品に原爆をテーマにしたのは意味深く、記憶を旅する形で鏡に反射する女性達と共に我々は広島に誘われる…確かに厭世的で静寂でサスペンス的ドラマでかなり重く辛いが、ラストまで観ると観て良かったと肌で感じる一本だと思う。‬ ‪にしても一気にこの度、吉田喜重作品のDVD BOXを購入して全て再鑑賞して、一気に観たが新たな発見や逆に連続観した事により色々と彼のスタイルが知れた。小津安二郎の事、彼は尊敬してるんだね…未見の方は吉田映画を!!‬
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