半兵衛

花形選手の半兵衛のレビュー・感想・評価

花形選手(1937年製作の映画)
3.0
学生の軍事訓練といういかにも当時の軍事状況に配慮しているような企画を、清水宏監督は行軍による動作やその周辺のドラマに限定することで自分の得意な歩く映像詩に仕立て上げ企画意図をねじ伏せているのが今見ると痛快。同時に遊び半分で軍事訓練に参加している登場人物の愉快な様子は、これからはじまる泥沼の戦争を全く知らない屈託な表情なのでちょっと切なくなるのも事実。

冒頭の時間処理の演出をはじめ清水宏監督によるセンスに満ちた演出が冴えていて、単調になりがちな行軍ドラマを映画として成立させている。特に正面で歩いている人たちを捉えていたショットが、突撃の訓練になると一気に横からのショットになり奥行きが一気に増してダイナミックな映像に変貌していく様はまさしく才人にしか出来ないテクニック。ただそれでも肝心の話が盛り上がりに欠けているので眠気に襲われることがしばしばあるのが残念。

主人公を演じる佐野周二は体格がよいのでスポーツマンという役柄がよく似合っている、そんな彼の友人を演じる笠智衆は若いし体型もスマートなので一瞬誰かと思ってしまうが声ですぐ判別できる。ちなみに本作で笠が佐野をひっぱたくシーンがあるが、渡哲也や渡瀬恒彦ばりに脳震盪を起こしそうな勢いで叩いていてビビるがあれは監督の指示なのだろうか。そして彼らの友人役で出演する日守新一のコミカルな挙動がいいアクセントになっている。

軍事演出のお堅さを嘲笑うかのように主人公たちが溌剌と疾走するラストが爽快。
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