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tokyo.soraのtakのレビュー・感想・評価

tokyo.sora(2001年製作の映画)
3.3
 「爽健美茶」やともさかりえの「キリンレモン」、本上まなみの”GOAください”などなどのCMを手がけた、石川寛の映画監督デビュー作。CMでみせた淡いトーンの穏やかな雰囲気が全編をやさしく包む。東京で暮らす6人の女性の姿をカメラは淡々と追い続けるのだが、これが決して飽きさせることはない。小説家志望、美容師見習い、売れないモデル、美大生、台湾からの留学生、喫茶店でバイトするコ。東京の空の下で、6人それぞれがそれぞれ悩み、ささやかな喜びを感じる姿に、観客は我が身を重ねたり、涙したり。女のコはみんな健気に頑張っている。

 僕が社会人一年生の頃。たいした事もできなくて、仕事も順調とは言い難く、自分が社会人生活に思い描いていたこととのギャップを感じてふさぎ気味だった時期がある。そのときに「魔女の宅急便」を観て(不覚にも)泣いてしまった。空飛ぶことしかできない魔女キキに、”これだけ”しかできない自分を重ねてしまったから。

 この「tokyo. sora」に出てくる6人の女のコたちは、25才のキキなのだと思う。ティッシュ配りしかできないモデル、カットさせてもらえない見習い美容師、「半分」の自分を認めて開き直ろうとする小説家志望。キツいけど、誰もが自分の”これだけ”を大事にして生きているんだ。

 そして彼女たちに関わった男性たちも、次第に行動を変えていく。喫茶店マスターの長塚圭史は外に目を向けるようになるし、編集者の西島秀俊はヨーコの「半分」を埋めてやろうとする。

 僕の知人のある女性は、ときどき句読点少な目、改行なし制限字数目一杯の”グチ”メールをよこしてくる。ストレス溜まってるんだろうけど、僕はテキストデータで応援するくらいしかできないのだけれど。映画館を出て、空にふと目がいった。同じ空の下で健気に頑張っている人たちと、そして自分に対して「頑張ろっか」と言ってみたくなった。

この映画は、柔らかくて優しい雰囲気を楽しむのがいいかも。ビターな結末もあるけれど、みんな頑張ってるんだ、とそっと応援してくれる映画であることは間違いない。
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