このレビューはネタバレを含みます
江戸川乱歩の小説が原作であるが、監督が撮りたいものをどうにか導くために、かなり無理やりな翻案をしたという印象が否めない。演出の面から考えると、この作品は極端に登場人物が少ないという点で特徴的であるということに気付く。というのも、男と、その母親と、連れてきた女以外は、登場人物の話の上にあがることはあっても、誰もスクリーン上には現れないのである。つまり、この作品には俳優が三人しかいない。話の筋がやや強引に進んだように思われるのも、俳優が三人しかいないという制約がいくらか影響しているのかも知れない。
この作品のなかで印象的だったショットは、母親の死後に男と女が戯れるシーンのあいだに、しばしば挟まる、彫刻作品を映したショットである。そこでは(おそらく編集によって)画面が歪められる。この歪みによって、触覚の快楽に目覚めた二人の「盲獣」の常軌を逸した生活世界が視覚的に表現されている。