Sari

愛の残像のSariのレビュー・感想・評価

愛の残像(2008年製作の映画)
3.6
本作『愛の残像』は、フランス映画界の最高峰のスタッフによって制作された作品である。

若い写真家フランソワと女優で人妻のキャロルの間に芽生えた恋には、切なさが漂う。しかし、彼らの関係は長続きせず、キャロルは次第に精神的に追い詰められてしまう。
物語は1年後に進み、フランソワは別の女性エヴと付き合っているが、彼女の妊娠を知ると彼は逃げ腰になってしまう。そんな中、フランソワは突然キャロルの幻影に悩まされるようになる…。

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本作はフィリップ・ガレル監督とウィリアム・ルプシャンスキー撮影監督という、フランス映画界でも最高峰の才能が結集した作品である。主演のローラ・スメットは、ジョニー・アリディとナタリー・バイという名だたるスターの間に生まれた才能の持ち主である。彼女の存在感とウィリアム・ルプシャンスキーによる見事なモノクロ映像は、観る者を引き込む。

フランソワとキャロルの出会いは、フランソワが写真家としてキャロルの撮影をすることから始まり、その撮影の中でお互いに強い魅力を感じ、恋に落ちる。
しかし、彼らの関係は長続きせず、キャロルは次第に精神的に追い詰められてしまう。
この描写によって、二人の関係が切なさと脆さで満たされていることが強く印象づけられ、彼らの愛が少しずつ崩れていく様子に心を打たれる。

本作は、愛の喜びと苦しみを描きながら、人々の心の奥深くに刻まれるような物語性を持っている。キャロルとフランソワの関係は、愛と痛みの対照的な感情が交差し、観客に深い感銘を与えるのである。

本作では、過剰な演技や妖艶さは抑えられ、ヌーヴェル・ヴァーグの特徴である等身大の人間の生々しさが見事に表現されている。
ガレル監督ならではの感傷的なムードを漂わせながら、狂気の愛とファンタジー要素を織り交ぜた作品を作り上げている。
また、終盤では意外なホラー要素と、衝撃的な結末を見せられるのである。
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