さすらい人

ドン・ジョヴァンニのさすらい人のレビュー・感想・評価

ドン・ジョヴァンニ(1979年製作の映画)
5.0
史上屈指の伝説的ドン・ジョヴァンニ歌手として今なお語り継がれ、各地の劇場で絶賛されたライモンディを筆頭に、テ・カナワ、ダムもそれぞれ当たり役で美声の全盛期。抜群の歌唱力・表現力は当然、見た目良し、演技力良しのスター歌手を並べ、オペラ指揮者として最もノッていた時期の巨匠マゼールの指揮も快速テンポでドラマティックに引き締まり、ラストの「地獄落ち」まで極上の音楽を堪能できる。

舞台を本来の中世スペインからガラス工芸隆盛期のヴェネツィアに置き換えて主人公ドン・ジョヴァンニに勃興する産業資本家としての顔を与え、好色貴族の一代記を階級没落劇にまで高めているところが、赤狩りでハリウッドを追われたジョゼフ・ロージーならではの信念と執念に根ざした慧眼。

映像美、演出の知的な奥行、映画用サントラに当時のパリ・オペラ座の総力を挙げて全曲収録した音楽…全ての点で最高水準でオペラ映画の最高峰。モーツァルト・オペラの神髄に触れてみたい入門者にも強くオススメ。
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