まだ知らない恐怖だった。
ふと見上げると屋根に隊列を組んでいる。あまりに表情のない眼の奥には、人間の理解を超えた虚無があるようで、ばつの悪い不安に引きこまれる。この生き物に対して潜在的に抱いていた、そういった不安と警戒の感覚を、恐怖として人の共通認識にしてしまった。
人類のひとつの感情をラベリングしてしまった問題作。ヒッチコックの先見性の高さもあるだろうし、やはりホラーというジャンルの創造性の高さもあるのかな。あらかじめ恐怖という感情結果が決められているから、そこに至るまでの過程に創作パワーが向かいやすいのかもしれない。