イチロヲ

江戸川乱歩の 陰獣のイチロヲのレビュー・感想・評価

江戸川乱歩の 陰獣(1977年製作の映画)
4.0
刺激を追い求めている探偵小説家(あおい輝彦)が、元交際相手の脅迫行為に苦しめられている有閑夫人(香山美子)と接触する。江戸川乱歩・著「陰獣」を映像化している、松竹産のサスペンス映画。筆者は原作を読了済み。

随所にアレンジが施されているが、基本的には原作の台詞まわしと物語展開を忠実に再現。乱歩が得意とする「サディズム」の系統であり、夫人の被虐趣味を暗示させながら、元カレによる脅迫と夫殺害の関連性を紐解いていく。

女優陣では、1975年度「東京エマニエル夫人」でロマンポルノデビューした田口久美が、主人公にサディズムというヒントを与える重要な役どころを好演。60年代の青春スター・香山美子(リカちゃん人形の由来)が、妖艶なヌードを披露しているところも醍醐味。

東映エログロ路線を水で薄めたような作風だが、昭和初期の下町を再現した雰囲気作りに秀でており、「乱歩作品を映像で観ている感覚」にどっぷりと浸ることができる。とりわけ、碁を打つ音を「打擲」の音に幻聴する場面が素晴らしい。
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