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慟哭のmitakosamaのレビュー・感想・評価

慟哭(1952年製作の映画)
3.5
新東宝youtubeにて。佐分利信が監督と主演を兼ねた文芸作品。

演劇グループの演芸座が舞台。佐分利が主人公で劇団付きの劇作家。ベテラン・新人が入り交じるかなり大きめな一座だと判る。実際に俳優座が全面協力しており、モデルになった劇団だ。

主人公が精神を病んだ妻に先立たれる所から始まる。ヨリ目でちょっと滑稽な死に顔。旦那もそこまで悲しそうじゃ無く、やっと苦労から解放されたという印象だ。

そんな中、劇団の新人女優・文子が主人公にグイグイとアタックする。彼女も実際の俳優座の新人だったようだ。正直そこまで美人でも無いし、ハッキリ言って超超ウザキャラだ。

こういう俳優が監督と主演を兼ねる場合「俺の考える格好良い俺」を演じるのは定番だ。
佐分利はこういう風に若い子に言い寄られても平静を保つちょっと枯れたオジサンを演じたかったのかな?
それにしては言い寄ってくる女がビッチ過ぎるわ…。ハッキリ言って団体行動の中にいたら滅茶苦茶に嫌われるタイプだし、劇中でも嫌われてる。

でも主人公はこのウザキャラに結構甘い。普通に旅行についてきたりして甘やかす。ダメじゃん。

余りにもウザ女が目に余るので、ベテラン女優に教育を任せることにする。
このベテランに木暮実千代。この配役も実際の俳優と上手くリンクさせている。実力派の木暮が劇中のベテラン女優と上手くリンクしている。演技力があることを演じてる。流石の一言。

木暮演じるベテランもまた主人公と過去に恋愛感情があったことで、ウザ女が反発。

ここで悲劇が。ウザ女に恋慕していた劇団の若い衆に手込めにされちゃう。
結局ウザ女は女優を諦めて辞めちゃう。主人公が目をかけていたのに。
でも、この悲劇を招いたのは主人公が甘やかしたからだよな。そうとしか思えない。
それにウザ女は、どっちにしろ女優になんかなれなかったとも思う。

最後、別れた妻の遺影を抱いて泣く主人公。冒頭のドライな死別がこういう形で戻ってきたのは良い意味で驚いた。このラストがあったからこそ文芸として成立する作品だなと思う。
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