真鍋新一

銀座の次郎長の真鍋新一のレビュー・感想・評価

銀座の次郎長(1963年製作の映画)
3.4
1作目からもう3年経って銀座の街も変わってきた。浅丘ルリ子の役が笹森礼子に交代。とても素敵ではあるのだけどもアキラと5分で渡り合う強さはない。むしろ、お色気枠で出てくる五月みどりの手際の良さにアキラがドン引きする場面のほうが面白い。「お暇なら来てよね」「一週間に十日来い」の2大名曲の歌唱シーンもある。脚本は「サザエさん」の雪室俊一。なんというキャリアの長さ。

ギャグは初期2作のユーモアとは異なる、かなりナンセンスなもので、街のドブネズミたちが会話したり、若水ヤエ子と野呂圭介が迷惑をかけまくったりと賑やかではある。由利徹がアキラのパンチを受けて、ただ飛んでいくだけでなく、いくつもの家の壁をぶち抜いて、いつの間にか女湯の底から顔を出すという壮大なギャグはその最たるもの。

それにしても親父コンビ、中村是好と桂小金治の場面が前作以上に多く、もはや作品を乗っ取りつつある。おまけに今回はヤクザの罠に引っかかって集団就職の少年少女たちを誘拐され、銀座の商店街で働くはずだった彼らがヤクザ専用のトルコ風呂で奴隷のように働かさせられるという、シリーズ中もっとも重い罪を犯している。藤村有弘(やっぱりスギちゃんに似ている)のインチキトルコ人もそうだが、芸人さんを野に放って尺稼ぎをしようという魂胆が見えるのは良くない。

藤竜也が銀座の若衆仲間のひとりの役で少し目立っていたが、アキラの子分枠は前作からの杉山俊夫がいるのであまり見せ場なし。世が世ならば青春アクションスターの道もあり得たことがわかる。もっともアキラの戦闘能力の高さを超えられるスターは日本にはおそらくいない。クライマックスの乱闘シーンで見られる跳躍力はジャッキー・チェン並みだ。
真鍋新一

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