シンタロー

山河遥かなりのシンタローのレビュー・感想・評価

山河遥かなり(1947年製作の映画)
4.0
第二次世界大戦後、アメリカ統治下のドイツ。国連救済所に強制収容所から救出された多数の戦争孤児が連日送られてくる。チェコスロバキアの幸せな家庭に育ったカレル・マリク少年は、ナチスにより一家離散。母ハンナと無理矢理引き離されたショックから、失語症と記憶喪失に陥っていた。子供達は救急車で保護施設へ送られるが、毒ガス室へ入れられるとパニック状態になり脱走。カレルも友人と逃げるが、友人は川で溺死してしまう。その頃、ハンナはカレルを探してあてのない旅を続けていた…。
リアリズムの名匠フレッド・ジンネマンによるドキュメンタリータッチの力作。後にミシェル・アザナヴィシウス監督がチェチェン紛争に舞台を移して「あの日の声を探して」でリメイクしています。ナチス下の子供を描いたものでは「縞模様のパジャマの少年」「黄色い星の子供たち」等の名作がありますが、実際の戦災後の瓦礫の山での撮影は、この当時にしか撮れなかった唯一無二の厳しい現実にあふれています。ロケはドイツが中心で、監督もウィーン出身のユダヤ系ということもあってか、戦勝国アメリカの映画とはあまり感じられません。カレル少年役のイワン・ヤンドル、母親ハンナ役のヤルミラ・ノボトナは地元のほぼ素人同然の役者で、よりリアルを追求した感じの芝居も印象的です。単に親子のお涙頂戴ものではなく、カレルを保護するGIスティーブとの交流を通じて、子供らしさを取り戻していく姿が温かく描かれているのが素晴らしい。リアリティの厳しさと、ヒューマニズムの温かみのバランスが絶妙です。
愛情深いGIラルフ・スティーブ役にモンゴメリー・クリフト。「赤い河」に続く映画2作目ですが、公開は本作が先になりました。早くもアカデミー賞主演男優賞候補になり、一躍ハリウッドの新星と話題になりましたが、どう見ても美しすぎて、1人浮いてるような…登場シーンから輝きの次元が違う。スタイル抜群で軍服も良くお似合いです。ハリウッドのスターシステムを嫌い、スタジオとの専属契約を拒んだために、全盛期にも出演作が少ない稀有な方です。
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