ヤスマサ

博士の愛した数式のヤスマサのレビュー・感想・評価

博士の愛した数式(2005年製作の映画)
3.8
小川洋子氏原作の同名小説の映画化。
記憶が80分しか保たない天才数学者(寺尾聰)と、彼の世話をする家政婦の杏子(深津絵里)とその息子ルート(齋藤隆成)の擬似家族が織りなすヒューマン・ドラマ。

杏子視点の原作と異なり、映画では中学で数学の先生となったルート(吉岡秀隆)が、年度はじめの数学の授業で、自身の回想と数学の魅力を織り交ぜて語る形でストーリーが進む。
博士の記憶が保たない故の愛情が豊富に語られている内容だ。
ルートが語る数学の魅力は、博士の魅力そのものである。
「実際の生活に役が立たないからこそ、数学の秩序は美しい…、
たとえ素数の性質が明らかになったとしても、生活が便利になる訳でも、お金が儲かる訳でもない…、
真実を見出すことのみが目的なのだ」
という台詞は、真実は結果ではなく、それを見出す行為が美しいのだと、日々の慈しみを説いている。
起伏の少ないストーリーは、愛情に包まれた温和な日常を表してるようだ。
博士と義理の姉(浅丘ルリ子)との関係に暗い過去を感じるが、それもむしろ清廉潔白でなさそうなところに人間性を感じさせる。
個人的にはルートの少年野球の試合で、背番号を博士が記憶している往年の阪神タイガース・ナインにしたところが好きだ。
作者の阪神タイガースへの愛情を感じられる。
淡々とした日常を描いた、心が温まる作品。
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