くもすけ

フリッツ・ザ・キャットのくもすけのネタバレレビュー・内容・結末

フリッツ・ザ・キャット(1972年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

ドキュによればクラムの描いた漫画の背景は友人に撮ってもらった写真をもとにしていたらしいが、映画はバクシの地元ローワーイーストサイドがモデルの暗い街が舞台。このあとつくる「ヘビートラフィック」でたっぷり描くラビと黒人の路地街。
ひとたびこうしてバクシストリートの脇道に入ると、いつものフリッツもかたなし、ただの借りてきた猫になる。アジ飛ばして焚きつける姿とヘコヘコの腰がださい。

女性キャラクターの描き方も違う。クラムがただの餌食として描いたカラス女には、プレスコ(路上やバーでの酒混じえた会話)をあててパワーアップ。股から取り出されたグラスに誘われ廃バスの中でカラス女にむしゃぶりつくフリッツは、文字通り猫鳴き声で盛りがついて悟りを開くのだが、原作にはないカラス女のセリフが足されてる。「Oh, Fritz, you ain't black enough!」

シーンの切り替わりが格好いい。真っ黒の画面でボ・ディドリー流して少しずつ画面によって街を大俯瞰。過激派のアジトで目覚めた夜明けの朝露に映り込む建物の影。

漫画と違って映画の派手な爆破と終始気楽なフリッツにはクラム独特の虚無的な徒労感が希薄。バクシの思い入れは地元のゴロツキや街そのものにありそう。