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探偵事務所23 くたばれ悪党どものnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.7
 夜中の米軍基地、車のエンジン音を聞いた米兵が施錠された門を開けると、2台のトラックが侵入する。2つの組の武器・弾薬の取引現場となる路上に、猛スピードで現れたペプシコーラのトラックは、彼らの間を突っ切ると突如向きを変え、鉛の銃弾をぶっ放す。もの凄い破裂音と共に、ペプシの瓶が粉々に割れて行く。こうして深夜の立川基地付近で武器弾薬の取引きをしていた桜組と大槻組の幹部は、突如数名の男に散弾銃で襲撃され全滅した。トラックの中から出て来た男は炎上する中を慌てて逃げたが、警察の緊急手配により呆気なく御用となった。真辺公一(川地民夫)は容疑者として武蔵警察署に拘留された。そのニュースをカジノで聞いていた田島英雄(宍戸錠)は踊り子のサリー(星ナオミ)を置き去りにすると、慌てて署に出向いた。一課の熊谷警部(金子信雄)は面通しを済ますと、私立探偵の田島におとり捜査を依頼する。桜組と大槻組の連中が待ち構える中、田島は釈放された真辺を連れて逃げるのだが、クラブ「エスカイヤ」で真辺を子分とする社長の畑野(信欣三)が待ち構えていた。畑野は田島を警察の犬じゃないかと疑い、すぐに吉浜(上野山功一)に命じて身辺を調べさせる。畑野の傍らには彼の情婦である千秋(笹森礼子)という女がいた。

 大藪春彦のハードボイルド小説を原作とする物語は、アウトローのしがない探偵・田島英雄(宍戸錠)の活躍を描いた痛快アクションである。男は熊谷警部の命を受け、危険なおとり捜査に繰り出すのだが、畑野にバレないように付く嘘の数々はさながらコメディの様相を呈する。キャバレーで突如サリーに引っ張られ、一緒にチャールストンを歌い踊る軽妙さ。サリーと千秋という対照的な2人もそうだが、探偵事務所23の秘書を務める入江(初井言栄)のコミカルな演技もその雰囲気に拍車をかける。共に暗黒街へと侵入する真辺の無鉄砲さに漂う死の匂い。川地民夫の笑顔は次作の『野獣の青春』同様に、狂気にも似た危うさで死線を彷徨う。物語としてはやや荒唐無稽にも思えるが、最初はクスリとも笑わない情婦を演じていたはずの千秋が徐々に人間としての表情を取り戻す様子が印象的だ。カゴの中の鳥の彼女は、いつか誰かに「ここではないどこか」へ連れ出してもらうことを夢見ている。だがそんな彼女の理想を叶えようとした田島に畑野の嫉妬に狂った凶弾が迫る。地下室での天井ぶち抜きアクションの捨て鉢な面白さ。そしてクライマックスの倉庫内での意味不明な銃撃戦。大藪春彦のシリアスなサスペンスを笑い飛ばすような清順風喜劇が底抜けに明るい。
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