真鍋新一

探偵事務所23 くたばれ悪党どもの真鍋新一のレビュー・感想・評価

3.7
いつもは憎たらしい悪役の金子信雄が頼れる警部で行く先々でジョーを手厚くサポートしてくれる。いつもは主人公の邪魔しかしていない彼が味方につくと、実に頼もしい。

そして笹森礼子。ヤクザのボスの信欣三(いつもは貧乏で真面目な親父役が多いのでこの人も異質なキャスティング)の女。彼女の大きな魅力である輝く大きな瞳を封印させて、徹底的に死んだ目をしている冷たい女を演じさせている。

そんなわけで、キャスティングひとつにとってもなかなかにイレギュラー。『殺しの烙印』とこの映画だけで日活アクションを語るなかれ。鈴木清順監督の映画は常に傍流である、ということを頭に入れておいたほうがいいと思う。

傍流でありながら、いつもの日活アクションだったら適当に済ませるシーンをしっかり時間と金をかけて撮っている。だから今でも面白い。でも当時の日活社内の感覚だと同じアクション映画なのにどうして金ばかりかかる?という話になる。キャバレーの場面でも、主演俳優と同じレコード会社の歌手を宣伝ということで出してもらえばギャラは安いしタイアップも取れる。でも清順はそんなテキトーは許せないのでちゃんとオリジナルソングを作り、映画の見せ場として機能させる。ちなみにオープニングテーマは宍戸錠作詞。強い。

川地民夫が楠侑子(やはりメイクがいつもと違うので一瞬気づかない)を殴り飛ばしたかと思うと次のカットでは愛し合っているというシーン。原色の照明で彩られたその部屋は紛うことなき清順ワールド。そのスタイリッシュな演出で軽率な暴力をカッコよく映し出す。主要な登場人物に死者が出るのはアクション映画の常だけれども、乱闘するヤクザ集団までがとにかく大量に死ぬ。人命をポップに軽んじるところはまるで『キングスマン』のようでもあり、この軽薄さはいつまでも先進的な表現として評価され続けるのだろう。

リアルタイムの頃から、『ツィゴイネルワイゼン』以降の再評価、そして渋谷系以降と、サブカルチャー的な受容の仕方と常に相性がバツグンであった清順スタイルの本質がそこにあるような気がする。
真鍋新一

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