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深夜の告白の東京キネマのネタバレレビュー・内容・結末

深夜の告白(1944年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

製作が1944年なので、ワイルダーが38歳、チャンドラーが56歳の時の作品だ。

確か記憶では、ワイルダーはチャンドラーとは喧嘩ばかりで全くシナリオ作りがうまく行かず、最終的には殆どのプロットとダイヤローグをワイルダーが作ったということだったと思うが、いやいや十分チャンドラーっぽい雰囲気も出てて面白い。特に導入部は完全にハードボイルドタッチだ。

とにかくシナリオがしっかりしているし、役者もいいし、演出もシャープだし、で映画としては完璧なのだが、幾つかの「?」も残る。

先ず、マクマレーがスタンウィックに何故一目惚れしたのかが解らない。本当に好きになってからこいつはタダの人殺しじゃないか、という心の変化も読み取れない。つまり、演出で伝わってくるのは、マクマレーは本当は金が欲しいだけで、スタンウィンクはただのきっかけだったんじゃないか、という点。

それに、スタンウィックはファム・ファタールとしてはどうも線が細い。これは時代的なものかも知れないが、強烈な悪女になっていないと感情が盛り上がらないし、物語が成立しない。

それと、娘の恋人で、もしかしたらスタンウィックのつばめだったかも知れない若い男の存在が、プロット上の狂言回しにはなっていても、一体なんなのかが意味不明だ。

あと、エンド近くで娘の居場所を教えて娘の口封じをさせたということは解るのだが、だったら何故エドワード・G・ロビンソンにわざわざ告白し、尚且つ告白してからも海外逃亡なんかしようと思ったのか。

(すいません、ワイルダー監督に対して偉そうです。)

このなんか落ちて来ない展開というのがまた一つの味になっていて、まあこういうのもありかな、という感じにさせてくれるところがワイルダーの凄さなのだが、それにしても映画的空間がもの凄く狭いので、息苦しい映画だった。

いや、でも傑作なのですよ。間違いなく。
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