びいどろ

深夜の告白のびいどろのネタバレレビュー・内容・結末

深夜の告白(1944年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

【記録】

いやはや、引き込まれた。久しぶりに感動した。もう一度観るには精神力がいりそうだが、また観たい。
原作小説『Double Indemnity』も面白いのだろうが、何よりビリー・ワイルダー&レイモンド・チャンドラーのコンビによる脚本の妙。保険会社の敏腕営業マン・ネフがただならぬ様子で独白を始め、そこへいたる経緯が語られていく倒叙型のサスペンス。セリフの一つ一つが痺れる名文であり、しかし映画の流れにおいて浮いておらず、映画の質量をぐっと増している。
「事件の計画」「犯行」「真相の発覚」までの間に、フィリスの更に隠された部分やローラ、ニーノが絡んでくるなど単調になっていない。犯行手口もなかなかに凝っていて、サスペンスにありがちな「そんなミスするかよ」という有り得なさが限りなく除かれていると感じた。
俳優の演技が本当に見事。
ネフを演じたフレッド・マクマレイは、悪女に取り込まれてゆく主人公的位置だが、毅然とした態度のようで抗いえないという、絶妙な振り回されぶり。ラストシーンは『勝手にしやがれ』のミシェルに劣らない倒れっぷりではなかろうか。影響与えてるのかな?他にも後の映画やドラマ、マンガに影響を与えているのだろうな〜という演出が多かった。
バーバラ・スタンウィックのフィリスは、これぞファム・ファタール!という最高の悪女。彼女の演技によって犯罪の計画や事後の隠蔽時間に現実味がもたらされ、逆に、こんなにも非情で恐ろしい女性がいてよいものかという非現実味もある、と表裏の面白さが作られている。
そして、ネフの親友の調査員キーズを演じたエドワード・G・ロビンソン。作中を通してほとんど厳しい顔なのだが、ネフに寄り添い、少し辛口だが愛のある皮肉を言う。ラストに向けて、彼の心情を思い切なくなってゆくのだが、彼の存在が見ているものにゆとりをくれる。とにかくネフとの関係が絶妙。
セリフやガジェットに伏線が沢山散りばめられていて、倒叙型ゆえの破滅への道筋が見えて、面白い。全ての人や物事がしっかり噛み合っていて、作りとして気持ちが良かった。
音楽もぴったりの劇伴。

ネフとフィリス、出会った時からお互いやべーやつの会話。
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