このレビューはネタバレを含みます
いやあ面白かった。ストーリーテリングのお手本のようなサスペンスで、原作はジェームズ・M・ケインで脚本がビリー・ワイルダーとレイモンド・チャンドラーだからもうお腹いっぱいな感じ。保険金殺人も告白形式の倒叙ミステリもまだ一般的でなかっただろうからすごく丁寧な作り。
ケイン原作の他の作品は「郵便配達は二度ベルを鳴らす」を昔観たくらいだけど別に探偵が主人公でなくともハードボイルドは成立するんだと思った。これも保険のセールスマンなのにめっちゃタフガイなセリフ回しなのが面白い。
この主人公がいわゆるファム・ファタールに惑わされて殺人に手を貸すことになるのだけど刑事コロンボでよくあるバレるかどうかのサスペンスや破綻によるカタルシスを味わいながらもこういった顛末を面白がる私たちのゲスさもあぶり出しているわけで、刃はこちらに向いているのだよなとも思った。
サスペンスに限らず映画の面白さとは「こういう計画ですよ」と最初に提示しておいてそれが狂っていくことによるハラハラ感なのだなと再認識した。たまに計画を提示しておいてその通りに進むだけの映画とかあったりしてああいうのは本当に理解に苦しむ。裏の裏なのか?
(Twitterでの呟きより)