三樹夫

深夜の告白の三樹夫のネタバレレビュー・内容・結末

深夜の告白(1944年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

保険のセールスマンの男が人妻に惚れて、旦那殺しに加担するという、お手本のようなフィルム・ノワール作品。同監督作の『サンセット大通り』を彷彿とさせる、何でこうなったのかという、主人公の語りによる回想で話が進んでいく。
人妻に惚れてというのでもわかる通り、悪女教科書のようなファム・ファタールが登場。階段を下りてくる美女というのは、ファム・ファタールと思って間違いない(フィリスが階段を下りるカットが印象的に挿入される)。
また、フィルム・ノワールの特徴として、登場人物が最低人間というのがあるのだが、メインの二人ネフ、フィリスの最低人間っぷりが目を引く。男を上手いこと転がして、スーパーでのお前もう私から逃げられんでという蟻地獄女に、挙句甘い汁は独り占めを企むという雪崩式に飛び出す悪女っぷりのフィリスもさることながら、主人公ネスのフラフラっぷり。一度は人妻の誘惑を振り払うが、その後すぐにフラフラと、急転直下の地獄行き。

サスペンスを盛り上げるのが、有能調査員キーズの存在。一度は事故で終わったのかと見せかけて、バシバシと事件の核心に迫ってくる。ネフ、フィリス、キーズの三人が思いがけなく揃う、主人公の部屋前廊下は手に汗握る。ドア裏に隠れたフィリスがバレるのではないかと、観ている者を犯罪者側へと誘う。
それまでネスが火をあげていたが、ラストでキーズが火をやるという逆転が起き、男の友情が演出される。作中度々ネスが火をやっていたのはこのラストに向けて積み重ねられたものであった。何故有能調査員キーズが事件を完全に見透かせなかったのかというと、ネスと近すぎたという、タバコの件といいBL度が凄い勢いでスパークして終わる。
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