モンティニーの狼男爵

アヒルと鴨のコインロッカーのモンティニーの狼男爵のレビュー・感想・評価

5.0
【神様、この話だけは、見ないで欲しい】

中学生の頃、兄が借りてきたこのdvdを観て、初めて欲しいと親にねだった作品。

自分の邦画好きの原点と言っていい。切なく理不尽で、所謂、絶望に値する世界の中で、一筋の光が一瞬間灯るような感覚。原作物は率先して読むようにしていますが、この作品だけは、自分の中で映画として完結させたいと思った。

瑛太演じるカワサキ。濱田岳演じるシイナ。2人の微妙な距離感と、それぞれのそれぞれに対する優しさと。人間の根本はきっと、生まれ育ちなんて優に超える場所にあるんじゃのぉ。

世界の中で絶対にある事象と、正義感溢れるペットショップの店員が出逢えば、こうなるであろうリアリティさと、神の声を持つと称されるボブ・ディランとを結びつけるストーリー性と、日本人ならではであろう心の機微のユーモアは、流石の伊坂節。

見終わったあとに残る感情を表す言葉が未だわからん。
『ボキャブラリーが感情を超えることは永遠にない』
20年近く生きてきて、これ程この文言を強く意識することは無い『出来事』。この年になって、言葉にばかり必死になって、それを何よりも大切にしている自分の価値観を、唯一覆す映画作品。