イルーナ

SURVIVE STYLE5+ /サバイブ スタイル5+のイルーナのレビュー・感想・評価

3.8
「日本映画じゃないニホンエイガ」というコピーがよく似合う映画でした。

アバンタイトルの浅野忠信が妻を殺害してその死体を森のなかに捨てに行くシーンはまさにホラーなノリなのですが、仕事を終えて一服しようとしたら目の前に殺したはずの妻が……ここからスタイリッシュかつ超ハイテンションなOPに。この流れだけでもうすっかり病みつきになってしまいました。
(ちなみにメインテーマは昔Qさまで使用されていたので、本作を知らなくても曲を知ってる人は多いかと思います)

変なCMばかり考えてニタニタしているCMプランナーには、私も空想しながら笑う癖をよく指摘されるので「あっ、私そっくりだ!」と共感しました。
催眠術でハトにされてしまったお父さんとその家族のお話は、最初は滑稽だったのに、だんだん切なさを帯びてくる不思議さ。息子の「人生は変わってゆく。ぼくたちもそれを受け入れなくちゃ」のセリフにはグッときました。
そして浅野忠信と何度殺しても復活する妻の話は、スタイリッシュなアクションや映像に圧倒されながらも大笑いしながら観ていました。そんな二人がカラフルに飾り付けられた家で、「牧人羊を」が流れるなか、クリスマスの日に和解するシーンはとても素敵。当時あまりに感動してイラストのネタにもしたくらいでした。

終盤に急激にシリアス展開になるのには面食らいましたが、それを乗り越えた先にあるのは、全てのエピソードが結び付くラスト。それは前向きになれる爽やかなものでした。
「複数の物語が複雑に絡み合い、1つの物語をなす」構成の作品は本作のほかにも、『パルプ・フィクション』や『ブギーポップは笑わない』が有名ですが、90年代~00年代まではそういう作品が流行っていましたね。

いろいろとインパクトの強い映画でしたが、中でも殺し屋と通訳のセリフが一番印象的。「あなたの役割は何ですか?」
まさにこの映画のテーマを一言で表しています。
イルーナ

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