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吉原炎上のmのレビュー・感想・評価

吉原炎上(1987年製作の映画)
4.0
遊女の矜持、遊女の悲しみ、遊女の愛、すべて美しく華やかに壮大に描かれた作品。羅生門河岸に堕ちても、客を取れなくなっても遊女は遊女。

私は花魁が好きです。遊女が大好きです。ファッションもそうだけど女の強さ・儚さ、すべてが詰まっていてどうにも惹かれてやまない。風俗であったというのも知っているし、美化するものではないとも分かっている。もし娘が生まれ、成人式に花魁の格好したいって言ったらぶん殴れる自信があるくらい、そこがどんな場所だったか分かっている。それでも好きでやまない。今作は昔から観たかったんだけど、ようやく観れた。大満足です。

私が泣いてしまったのは九重(二宮さよ子さん)が間夫に口説かれるシーン。若い子に熱をあげていたが、叶わぬ身請けを申し込まれ、叶わないのに言うな、嘘がいいと泣くシーン。このシーンに遊女のすべてが詰まっている気がした。まことか嘘かわからない場所。なら居心地の良い嘘がいい。

もうひとつは、菊川(かたせ梨乃さん)が鞍替えされ羅生門河岸の長屋にいるシーン。いわゆるすぐにヤレてしまう下級女郎がいる見世。下級に堕ちたけれど、遊女としての矜持、筋は通すと、若汐(名取裕子さん)を一蹴する。かっこよかった!ホントにかたせ梨乃さん演技派だなぁ!

若汐に御職を取られた小花(仁支川峰子さん)のキレっぷりも苦しくなったし、それでも客を取らなければと嘆く「ここ噛んで」は強烈だった。

花魁になりたいと花魁道中をすると心に決めた若汐と、若さん(根津甚八さん)のすれ違いは女の地獄、男の天国を地で行く感じがよかった。若さんは若汐を「救いたい」と考えていて、花魁になりたいと考える若汐を娼婦に成り下がったと吐き捨てる。
そこがもう違うのよね、覚悟の仕方が。所詮、男が夢見る世界。見世を総仕舞していた若さんが羅生門に堕ちるのは予想通り。

ラストは懸命に生きた女たちをなかったものにするかのような無慈悲な火事が起きる。ラストの呆然とする若汐の顔が忘れられない。
実際にセットを燃やしたらしく迫力があった。美しいセットだったなぁ。

花魁を好きで調べていたからこそ、その時代の言葉なんかがわかってより楽しめた。

ストーリー : ★★★★★
映像 : ★★★★★
設定 : ★★★☆☆
キャスト: ★★★★☆
メッセージ性 : ☆☆☆☆☆
感情移入・共感 : ★★☆☆☆

cc/一晩いくらのこの身体、すっきり抱いて下さいな。
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