まつむらはるか

吉原炎上のまつむらはるかのレビュー・感想・評価

吉原炎上(1987年製作の映画)
4.0
女郎たちの悲しさが滲むような映画だった。
家族の借金を身で返すために吉原に売られた主人公・久乃の成長が美しく、恐ろしさを感じさせつつも健気だ。

現代のモデルやそれに憧れる少女たちの、飽くなき美貌への欲望を描いた『ヘルタースケルター』や、頂点に立つために精神を蝕まれながらも舞台に立つバレリーナの『ブラックスワン』などのように、この映画も女性の世界を描いたドロドロした世界を描いた映画なのかと思っていた。

しかし、自らのために周りを蹴落とすような花魁はおらず、家族や愛する人のために、希望や夢を持ったりそれを失ったり諦めたりしながら日々暮らし、それをお互いに感じとり精神的に共鳴しあっているのを感じられる。華やかな見た目とは裏腹に、化粧部屋には独特の物悲しい雰囲気が漂っていた。

それぞれの事情がなければみんなきっと普通の女の子だったんだろうな…と思い巡らずにはいられなかった。

吉原を失った彼女たちはどこへ行くのだろう。