YYamada

告発のYYamadaのレビュー・感想・評価

告発(1995年製作の映画)
3.9
【法廷映画のススメ】
『告発』(1995年)
〈実話を基にしたフィクション〉
  (1930年代 / サンフランシスコ)

◆法廷の争点
・囚人を殺害した脱獄囚に対する
 アルカトラズ連邦刑務所の
 虐待の実態と事件との連関性

〈見処〉
①壮絶な虐待を暴く法廷サスペンス
・『告発』(原題: Murder in the First)は、1995年製作のアメリカ映画。
・舞台は1930年代後半のサンフランシスコ。極貧家庭に育ったヘンリー(ケヴィン・ベーコン)は、自分と幼い妹のために5ドルを盗み、25年の刑を受けアルカトラズ連邦刑務所へ収監。
・ある日、ヘンリーは脱獄を図るが他の囚人の裏切りにより失敗に終わり、光の届かない地下牢に収監される。3年ぶりに 地下牢から出た精神薄弱な状態のヘンリーは、食事中に刑務所内で裏切った囚人を殺害する。
・その弁護に当たった新人弁護士のジェームズ(クリスチャン・スレイター)は、ヘンリーと話すうちに刑務所の非人道的に行われている虐待の実態を知り、公判中にアルカトラズ連邦刑務所を告発することになる…。
・本作は、アルカトラズ連邦刑務所で行われていた過剰な虐待を告発し、同刑務所を閉鎖に追い込むきっかけとなった物語。当時36歳のケヴィン・ベーコンは、この作品で放送映画批評家協会賞の主演男優賞を受賞、彼の代表作の一つとなった。

②ノンフィクションの境界線
・「実話に基づくストーリーである」と幕を開ける本作であるが、自分の拙い英語読解力でも、史実とのギャップは決して小さくないことがわかる。
・ケヴィン・ベーコンが演じたヘンリー・ヤングの実像は、窃盗の常習犯として刑務所の入出所を繰り返し、他の刑務所に服役中に殺人も犯している生粋の凶悪犯。
・本作で描かれたアルカトラズの独房生活は3年間ではなく、数ヶ月だったとの諸説あり。また、マケインを殺害したのは独房から出た直後ではなく11日目で、脱獄が失敗した逆恨みの可能性が強いようだ。
・ヤングの弁護士がアルカトラズ連邦刑務所に対して人権侵害を訴えたのも事実だが、実際のヤングは、本作のラストと異なり、数年アルカトラズに服役後、他の刑務所に移送されている。
・なお、アルカトラズ刑務所が閉鎖したのも、虐待の事実が明るみになったためではなく、事件から20年以上経過後に、施設の老朽化と高額な物資輸送費を理由にしたものが実情のようだ。

③結び…本作の見処は?
◎: 冒頭20分にも及ぶ凄惨な虐待。ケヴィン・ベーコンの生気が失われていく過程には、目を背けたくなるほどの内容。ベーコンの迫真の演技はアカデミーノミネートされないのが不思議なほどのリアリティ。
○: 腐りきったアルカトラズ側の政府陣営に対して、本作で描かれる判事や陪審員は公正で法に忠実。好感が持てる
○: 80年代のアイドル俳優「ブラッドパック」から、大人になったクリスチャン・スレイターとケヴィン・ベーコンによる、本作の歪な友情関係が感動を呼ぶ。
○: 登場時間は長くないが、アルカトラズ副所長を演じるゲイリー・オールドマンは、前年に製作された『レオン』同様に、狂気の人物を熱演。
▲: 本作の弁護士を演じるクリスチャン・スレイターの金切り声や独善的な行動にはインテリジェンスを感じず、作品質を凡庸にしている気がする。
×: 「実話に基づくストーリー」と言いながら、本作で描かれる同情ポイントのほとんどがフィクションによるもの。映画そのものは素晴らしいが、事実を曲解する製作姿勢を含め「4.0」に届かないレビュースコアに留めたい。
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