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告発のCANACOのレビュー・感想・評価

告発(1995年製作の映画)
3.7
軍事刑務所として1861年から1963年まで102年間ほど存在していた(現在は観光地)、カルフォルニア州サンフランシスコのアルカトラズ刑務所と刑務所内の虐待を題材にした物語。原題は『MURDER IN THE FIRST(第一級殺人)』。原作なし。

重いテーマにケビン・ベーコンとクリスチャン・スレーターが大真面目に取り組んだドラマで、四面楚歌な状況下での2人の心の触れ合いも見どころ。終盤は「そりゃそうだ」としか言いようがない。

ケビン・ベーコン演じるヘンリー・ヤングは、5ドルの窃盗(軽犯罪)だったにもかかわらず、店が郵便局を兼ねていたため連邦法により25年の刑でアルカトラズ刑務所に収容される(この時点でおかしいけど)。彼はほか2名と脱走を図ったが、失敗。それは仲間が手口を漏らしたからで、ヘンリーはトイレもなく光も差さない地下の独房に入れられる(ほか2名は射殺)。

独房収容期間は19日と決められているにもかかわらず、ヘンリーはサディスティックな副所長によりアキレス腱を切られるなど虐待され、その独房に1000日間入れられる。地下牢から出るも、精神に異常をきたしていたヘンリーは、食堂で密告者を殺してしまう。「間違いなく死刑」と言われるなか、担当になった新人弁護士のジェームズが、ヘンリーの運命を変えていく。

非人道的な扱いを受け続けて卑屈になった囚人をケビン・ベーコンが熱演。パンフレットによると12キロ体重を落として挑んだという。怯え、自虐、露悪、話のすり替え、叫びと不安定な感情をくるくると覗かせるさまは、放送映画批評家協会賞の主演男優賞では足りないくらいの印象。

優等生すぎる嫌いはあるが、クリスチャン・スレーターは弁護士のジェームズを好演。ゲイリー・オールドマンが演じた副所長の存在も大きく、静かな圧が怖い。

実際に同刑務所で殺人を犯した罪に問われたヘンリー・ヤングを主役にしていて、冒頭で「実話」と掲示されるが、脚色も多いよう。どこからどこまでが脚色なのかは確かな情報元がない。パンフレットには次のように書かれていた。

>エンターテイメント作品である以上、映画にはテーマを伝えやすくするためのフィクションの要素も含まれているが、時間や場所など可能な限り細部にこだわった。だが、ヘンリー・ヤング裁判の調査は決してやさしい仕事ではなく、当時の裁判記録の多くは破棄されていた。ロッコ監督はこれらの書類は、不正発覚を恐れた当局者によって、故意に捨てられたのではないかと考えている。諦めきれないスタッフは、公文書館や歴史学協会の本、ファイル、写真などもしらみつぶしにあたり、全国に足を運んで以前の看守、囚人、判事、証人たちにインタビューし、複雑なパズルを組み立てるように脚本を書き上げていった。

◻︎参考
『告発』パンフレット

◻︎メモ
・娼婦役を演じているのはケビン・ベーコンの本当の妻であるキーラ・セジウィック。
・ケビン・ベーコンは、前年に『激流』(1994)、同年に『アポロ13』(1995)に出演。翌年の『スリーパーズ』(1996)では虐待する側の冷徹な看守を演じている。
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