三体艦隊

FAKEの三体艦隊のレビュー・感想・評価

FAKE(2016年製作の映画)
4.0
客観的な真実などない。現象は常にグレーだが、受け手はシンプルな嘘か誠かを求める。受け手の解釈次第だが、これだけ情報量の多い時代だと、いちいち検討する余裕はない。従って、陳腐で下劣だろうがマスコミやそれによって醸成された世論を一応信じるしかない。
佐村河内氏の印象はネームも描けない漫画原作者。ものづくりにおけるほんのスタート部分に才能があり、狂気的なプライドを有していそう。ところどころの歯切れの悪さは、そのプライドゆえにだと解釈。
また、本作は、佐村河内氏を通してドキュメンタリーとは何か?を突きつけるメタ構造になっているとも感じた。ドキュメンタリー映画自体についての知識があれば、メタ構造を明確に把握できただろうが、自分には読み取れず残念。
《通常のドキュメンタリー》は「事実の一部分を可能な限りフラットに切り取り、解釈は視聴者に委ねる」という印象がある。事実の何を切り取るかには、監督の主観が大きく混入すると思う。
今作は、事件を経てすでにマスコミによって事実の一部分を暴力的に切り取られ、国民の解釈がすでに完了している存在としての佐村河内氏≒《通常のドキュメンタリー》をさらに眺めるという構造。どこまで視点を重ねても、客観には近づいていかない。客観など存在しない?ならば、何をもって真偽を判断するのだろうか。

最後に、お笑い芸人の加害性を佐村河内氏の視点を通すことで、痛いほど感じた。個人的に、今の吉本的なお笑いは、お笑いの一部分を陳腐化させた、非常に下劣なものであり、有害なことに、人々の人間関係まで規定するほど強力なものだと感じている。"いじる""笑い飛ばす"なんて言葉が消えてなくなる日を願う。
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