ばーとん

FAKEのばーとんのレビュー・感想・評価

FAKE(2016年製作の映画)
1.0
馬鹿々々しい。森達也のアプローチが悪い。冒頭で本映画の趣旨について
「あなたの怒りを撮りたいのではない、あなたの悲しみを撮りたいんです」などと宣言し、心理的な誘導を行っている。結果、佐村河内氏は終始寡黙な悲しみの人を演じる羽目になった。

ああいうタイプの人はとことん調子に乗せて饒舌に語らせた方が絶対に面白い。その饒舌の中から真実、或いは真実の綻びがみえてくる。だのに冒頭の宣言によって「余計なことを喋るな」と共犯者としての黙秘を暗に要求している。そんな風だから新垣氏や神山氏らに取材を拒否される。森みたいな浅薄なブンヤの魂胆なんかとっくに見透かされてるよ。メディアが糞なのは周知だが、この森という人間もその糞メディアに最も近い男。

クライマックスで佐村河内氏がつくる楽曲が、お世辞にも出来が良いとは言えない粗末なモノなのは仕方ないとして、タイトルが「requiem」とは何の冗談か。そこは絶対に「Fake」だろうが。

ラストカットがまた小賢しい。「冷徹な視線を最後まで失わなかった」というポーズが鼻につくし、真実ってのは単純なものでなくもっと多義的なんだ、といった結論の押し付けが鬱陶しい。おそらくあれは台本だと思うよ。
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