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東京流れ者のarchのレビュー・感想・評価

東京流れ者(1966年製作の映画)
4.2
凄まじい表現主義的セットでの原色の応酬。話としては在り来りな義理人情と裏切りのヤクザ映画なのだが、映像の色彩感や画角といったルックの部分と、とりわけモンタージュの奇妙さによって異質な映画になっている。これが清順スタイルなのか。びっくりした。

面白いのは、やはり銃撃戦の部分。監督本人の映画はアクションだ(活劇だ)という言があるように、本作は銃撃戦がメインにある。ただ撮り方が凄い。線路を縦に利用した銃撃戦の画、スクリーンプロセスも冴え渡り、射程10mを明らかにする"赤"によってガンは発砲される。その図式が数回反復される。赤は射程圏内の印。そういった独自の世界観を定義していくような場面の連続によって本作は形作られていく。

明らかに『ジャズ大名』と同じセットを使った場面の渡哲也の運動量も相まって、素晴らしいものになっていたし、上記した縦のアクションの合間に、横スクロールのアクションによって、一枚の画としてキメるのだから、その緩急も抜群。

モンタージュに関しては、そこ映さないんだ!とかそこでそういうカットバックするんだ!とか予想外の映像を連続させる工夫がされていて、気を抜いて映画を観ることが出来ない。独特な映画文法の上に成り立っている異質さが魅力の作品でした。
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