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東京流れ者のkossのレビュー・感想・評価

東京流れ者(1966年製作の映画)
4.2
これが清順だ/映画美をつくる男。
ハイキーのモノクロームのオープニング・シークエンスに始まる映画美は、赤や青の原色の色彩にあふれ、舞台のような簡潔で象徴的な数々のセットが造形される。ハリウッドのミュージカル映画を模したピアノと階段だけのセット、クラブのホール、2階の部屋、奈落、三角屋根の通路。各シーンをつなぐようにリフレインされる原曲。もはや歌謡曲映画でもヤクザ映画でも青春映画でもない超越領域を示す。

この映画を観ると、映画とはストーリーを追って感情移入したり、俳優の演技に共鳴したりするものではなく、ただ目の前の映画美を楽しむものだということがわかる。

この映画の主導者は二人いる。鈴木清順のほかのもう一人は美術の木村威夫。セットはすべて木村の仕事。清順・木村コンビの最高傑作でもあるだろう。

さらに傑作の補助者がもう一人いる。渡哲也のスカイブルーのスーツとくるみボタンと白い靴、二谷英明の黒のタートルにグリーンのブルゾン、江角英明の黒パイピングの赤ジャケットに蝶タイ。クレジットはないが、これらの衣装は日活を支えた森英恵の仕事だと思う。いや、森は61年以降に映画衣装の仕事を減少させ、65年のアメリカ進出後はファッション界での活躍が中心になったという研究があるから、衣装も木村の仕事だったかもしれない。
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