OASIS

東京流れ者のOASISのレビュー・感想・評価

東京流れ者(1966年製作の映画)
4.0
ヤクザの世界から身を引いた男が、不動産を狙う他組の抗争に巻き込まれていく話。

白黒の世界の中、一人線路を歩く男哲也が突如ヤクザに囲まれてリンチを受ける。
無抵抗のまま殴られ続ける哲也に黄色いジャケットを着こなし銃を抜く彼のイメージ映像が重なり、ボロボロになった男が見つめる壊れた赤い銃(?)を捉えた瞬間、モノクロからカラーに変化する。
そこへテーマソング「東京流れ者」が流れるというオープニングの格好良さよ!

敵対する組への殴り込み、からの罠にかけられて転落という流れは笑ったし、そこからあっちこっちに足を伸ばす展開は滅茶苦茶で、ストーリー構成なんで飾りですと言わんばかりだった。
ドギツイ紫一色のクラブ店内、真っ黄色のショーホールなど、ギラギラした舞台セットが強烈に瞼の裏に焼き付いた。

長屋のシーンでは急に時代劇風になったり西部劇風になったりしてアクションもとにかく忙しない。
「俺の射程範囲は10mだ!」ってそれって以外と狭いんじゃないか?とも思ったりして。

後、新潟→北九州→東京と舞台が次々と変わるので、その度にまた色調が変化するので常に不思議な映画を観てるという感覚が味わえる。
「東京流れ者」が流れ始めたら主人公は瞬間移動し、死人が出る。
テーマソングはそんなルーラ+レクイエムのような扱いだった。

クライマックスはそれまでと打って変わって黒から白へと画面が変化し、真っ白な空間で繰り広げられる銃撃戦によって血のような赤い華が咲くという美しい光景には参った。
それにしても、松原智恵子の透き通った力強い歌声と、男を惹きつけてやまないその美貌は素晴らしかった。

「東京流れ者」は劇中何度流されたか分からず、レリゴー並みに聞きすぎて今も耳から離れない。
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