似太郎

宵待草の似太郎のレビュー・感想・評価

宵待草(1974年製作の映画)
3.8
【なんて気持ちのいい連中だろう】

かなり自分好みの世界観ではあるのだが、鬼才・神代辰巳監督作品としては割りかし地味な部類かと。大正アナキスト達の儚い青春群像劇。

和製アメリカン・ニューシネマ(『明日に向って撃て!』)と言うよりも実写版『カリオストロの城』みたいな雰囲気である。高岡健二がルパンで夏八木勲が次元大介。高橋洋子演じる令嬢はクラリス。宮崎駿作品にも通じるノスタルジックな意匠が見所の一つ。

大正流行歌の挿入の仕方がバッチリ決まっており、さすが神代辰巳。全体的に青臭く切実な青春映画という趣だ。細野晴臣の音楽は正直、ミスマッチだった。こういう話はもっと暗く土着的な音楽の方が合ってる。

監督・神代辰巳✖️脚本・長谷川和彦という『青春の蹉跌』のコンビだけはあり無常感と諦念の漲る作り。青森県ロケーションが神懸かり的に美しい。カメラマン姫田真佐久らしい超ロング・ショットが冴えに冴え渡る。

大胆な性描写もこの監督の中では控えめで、まあそこは非・ポルノ路線だから穏当ってとこかな。シラケ世代特有の雰囲気がムンムンなので観る人によって好き嫌い別れそう。😓
似太郎

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